一生忘れない、忘れたくない夏の思い出

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「そうかな…」 いつもクールな無表情に近い岬君が不安げに目を伏せる。…愛のことだけだ。岬君は愛のことになると表情が豊かになる。またじりじりと胸の奥が痛くなる。 「大丈夫だって、私が保証する!」 それだけ言うと私は岬君に軽く手を振って背を向ける。すごく、すごく泣きたくなった。 私は岬君にずっと片思いしていた。その片思いの相手が今年の春、大好きな友達の彼氏になったのだ。 岬君は私と同じ中学でしかも同じ美術部だった。最初は何も思っていなかった。ただの同じ部員の子。よく話す相手でもなかったから当然友達でもなかった。 それがある日のこと。 「あ…。青の絵の具、買ってきたのに忘れてきちゃった」 今日も部活に行き、コンテストの絵を描こうと準備をしようとしていたときだった。私は自分のよく使う青の絵の具を買ったのに持ってくることを忘れていたことに気がつき、愕然とした気持ちになった。緑とか紫とか混ぜて作れる色ならともかく単色の青がないのはまずい。 「…どうしよう」 誰かに借りようかと思ったけれど皆コンテスト前なので殺気立っていて話しかけるのが怖いくらいだった。今日は諦めて帰るかと思った時、岬君がそっと青の絵の具を渡してきたのだった。
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