始まり

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 リビングのテーブルで二人と向かい合ったとき、視線を合わす事が出来なかった。他の子は出来ている事が、自分には出来ない事が悔しくて恥ずかしかった。私はただずっと、目から出てしまいそうな涙を堪え続けていた。  二人は私に、学校に行かない代わりに、学校から送られたり、自分達が決めたプリントや問題集を必ずやる事を約束するか聞いた。私はうつむきながら何度も頷いた。そして、もうどうにかなってしまいそうな、あの不安と絶望を感じなくていい事に心の底から安堵した。  それから、ただ家にいるだけでいい日々が始まった。最初の内は何もせず、ただボーっとしていた。学校に行っていないのに、本来学校があったはずの時間は、ずっと緊張状態にあった。自分がどんな風に言われているのか、誰か家に来るのではないかと。でもやがて、家にいることに慣れたのかそうならなくなった。  そして、考えるようになった。何故、自分があんな風にわざとらしく避けられたのか。心当たりは一つだけだ。授業中にトイレに行ったこと。だが、そんな事でと疑問に思った。小学校は6年間もあるのだ。そんな事でああいう嫌がらせを受けるのなら、卒業するまでに何人がああいう目に合うだろうかと。でも、いつしか気づいた。  結局、時期だったのだ。まだ、学校が始まったばかりで皆慣れていなくて、いろいろなことに不安を感じていただろう。そういう時に、誰かを標的にして嫌がらせをする事で、その不安を解消しようとしていたのだろうと。
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