探しもの

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探しもの

 やがて、私はずっと考えるようになった。自分はどのような人間なのだろうと。家にいるときの自分は分かっているし、親といるときの自分も分かる。だが、外に出たとき、同級生といるとき、同級生と話すときの自分はどのような人間なのだろうか。それはいくら探しても、そこにいては見つかることのない探しものだった。  もしかしたら、あの学校でのトラウマがあって人と関わる事を避けるのかもしれない。だが、それでも良かった。それが、外に出たときの自分だという事が分かるから。  アニメは本当に面白くて、見るのが大好きだったが、いまいち感情移入というものが出来なかった。それは、自分がそこ以外の場所でどんな人間なのか分からないからだった。自分はどのキャラと考え方や受け止める感情が近いのか、そのような場面に自分がいたらどんな風に思い考えるのだろうか。  少しでも似たような経験をしていたり、見たりしたら分かるのだろうが、私には全く想像すらつかなかった。結局それを理解するためには、そこにいるだけでは駄目だった。そこを出て、様々な状況に置かれて見なければ、自分がどんな人間なのかは分からないままなのだ。  私は決心した。今の状況を捨てようと。母と父に再び学校に行きたいと話した。父と母はいろいろ相談し合って、前に通っていた学校とは違う学校に行かせてみようと決めたらしい。小学3年の間は、周りに溶け込むことが難しいかもしれないから、小学4年の4月1日に転校して登校できるよう両親が手続きをしてくれた。
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