真夏の輝き

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 あれは、4年前の夏休み。まだ家族でおじいちゃんの家に来ていたころだ。当時6年生だった翔と、まだ小学校にも通っていなかった稔。物置きの奥底から引っ張り出してきた水鉄砲で遊んでいた。あまりの暑さに2人はタンクトップを着ていた気がする。 「どっちが遠くまで飛ばせるか競争なー!」  7歳も下の弟に全く手加減せず、翔は全力で水を飛ばしていた。稔も負けじと飛ばすが、もちろん翔にかなうはずもなかった。翔は満足げにガッツポーズをしてみせ、稔は悔しくなって翔の顔に水をかけた。それを宣戦布告と捉えた翔は稔の背中にかけ返す。そこからはもう、大声を出しながら全身びしょ濡れになるまでかけ合った。  しまいには調子に乗った翔がホースを持ち出してお母さんに怒られた。あとからおばあちゃんにも洗濯物が濡れているといって怒られたけれど、翔は気にせずニヤニヤしていたし、稔はそんな翔と目が合って一緒になってニヤニヤしていた。  思えば、あれが兄弟2人で無邪気に遊んだ最後の夏だったのかもしれない。かつての楽しかった思い出を胸の奥にしまうように、水鉄砲を物置きの隅に押しやった。他に遊べそうなものがないか物色していると、薄汚れた段ボールに、一枚の紙切れが挟まっているのを見つけた。 「何だろう、これ」  端をつまんで引っ張り出してみると、湿気でふにゃふにゃになった紙が4つに折りたたまれていた。破けないようにそうっと開く。
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