真夏の輝き

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 部屋では勉強の休憩中なのか、翔がスマホをいじっている。再び暇になった稔は、会話の糸口にと思い翔に聞いてみることにした。 「ねぇ兄ちゃん。秘密の扉って知ってる?」  顔色を窺うように見ると、翔は一瞬ちらりとスマホから顔を上げた。 「秘密の扉? あぁ、掛け軸のこと?」  翔は稔の持っている宝の地図を一瞥し、またスマホに目を向ける。 「あ!」  そうだ、掛け軸だ。小さいころ、掛け軸をめくりながら秘密の扉を開けているみたいと言っていたっけ。2人の中での共通言語となっていたのだ。  稔は走ってもう一度『神さまのへや』に行った。仏壇の横に飾られている掛け軸。今も昔も変わらなかった。  そうっと掛け軸をめくると、ふわふわと埃が舞う。ふーっと吹いて埃を飛ばし、掛け軸の裏側を見る。あった。  裏側にセロハンテープで小さな紙が貼られている。テープはすっかり黄色くなっていた。 『子どもの国の押し入れに宝はある』  子どもの国、は子ども部屋のことだ。 「なんだ、結局最初いた場所かよ」  掛け軸からテープをぺり、と剥がす。ほとんど粘着がなくなっている。  稔はまた走って子ども部屋に戻り、翔の前を横切って押し入れに向かう。押し入れは普段から布団の出し入れをしているが、奥の段ボールまでは見たことがなかった。  段ボールを開けると、古いアルバムに混じって小さなクッキー缶があった。これも埃がかぶっている。
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