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二日酔いで頭が痛い俺は寝返りをうった。
まどろみのなかで、小鳥のさえずりが聞こえる。川のせせらぎも。そして、水車が一定のリズムで回る音とほし草の……かおり?
おかしい。俺のウチは排気ガスや人々の吐息渦巻く街にあるはずだ。
ぼんやりとしつつも違和感に気づきながら、目を開けた。
そこにあるのは、むき出しの木の梁。見慣れた白い天井とは明らかに違う。
ベッドの感触も布団やマットレスではない。なんだかカサカサしていて……、これは干し草の上にシーツを敷いた感じだろうか。草原の上にテントをはってキャンプしたときを思い出す。
いったいここはどこだろう。
もっと様子を見てみようと、体を起こす。そのとき――、
「きゃー!」
と、若い女の悲鳴が響いた。
――助けが必要か?
とっさに寝床から飛び出し床に立つ。が、床板はもろく、左足が埋まった。
やばい。どなたの家か存じあげないが、俺は器物損壊してしまった。
またしても女性の叫び声があがる。それはとても近いところからで、この部屋の入り口からだった。
すぐそこに女はいた。
足首まで隠れる藍色のワンピースを着ていて、それから……。えっと、俺の目が正常なら、それから赤茶色の耳が、もふもふの狐のような耳が頭部にある。目鼻は両手で隠されていてよくわからない。
「あの。どうかしましたか」
知らない人(獣人?)の家にいる俺自身がどうかしているのだが、困っている人を放ってはおけない。
埋まってた肉厚の片足を引きあげ、女性へと近づく。
女性は栗色の純真そうな瞳をのぞかせると、「キャッ」と俺から逃げるように去った。耳と同じ赤茶色の肩下まである髪とふさふさとした尻尾をふわりと揺らして消えた。
なんだったんだろう、と考えこみながら下を見る。全裸だった。
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