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満月が眩しい夜の公園。そこに早川愛の姿があった。程なくして一台の車が静かにやってきた。
「ごめん、遅くなって」
助手席の窓が開き、一人の男性が声をかける。
「大丈夫よ」
と愛はドアを開けて車に乗り込んだ。
月が映える河川敷を車で走る。もうすぐ夏が終わる。少し開けた所に車を停め、フロントガラスから月明かりで煌めく川と果てしなく広い夜空を見ていた。
「今回の出張はどのくらいの期間なんだ?」
「1ヶ月よ」
「俺の奥さんと一緒じゃないか」
「あら、そうなの?」
「商社ウーマンだからな。海外出張ばかりだ」
外の草むらから虫の声が聞こえてくる。
「月が綺麗ね」
「ああ、綺麗だな。今日は満月か。月もお前みたいだよな。今日は綺麗だなと思っていても数日経って気づいたら鋭く尖った形に見えたりして。表裏があるみたいだ」
手を頭の後ろで組み目を閉じて話す。
「そんな裏の私と付き合っているのはあなたでしょ?江波くん」
「そうだな」
2人は見つめ合い唇を重ねた。
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