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「へー、そういうことだったんだ」
愛は、朝食を準備しながらテーブルに座る太一の話しを聞いて言った。
「青春してたんだよ」
と懐かしんで太一が言う。
「じゃあ、もし10円玉の裏側が出ていたら、私たちは結婚していなかったのかもしれないわね。私も早川愛じゃなかったのかも」
ふふふと微笑みながらフレンチトーストを太一の前に置いた。
「もし裏側が出ていて、江波に告白されていたら君は江波と付き合ったの?」
向いに座り、コーヒーを飲む愛に太一が尋ねると
「さあ?それはどうかしら?」
コーヒーカップからにこっと微笑む愛の姿があった。
「帰るのは来月になるけど大丈夫かい?」
ネクタイを整えてくれる愛の頭を撫でながら聞く。
「ええ、大丈夫よ。心配せずに行ってきて。あ、でも正直、少し寂しいから毎日連絡はしてね」
「もちろんだよ」
2人は微笑み合う。
太一は大手商社の商社マンで海外出張が頻繁にある。今回も1ヶ月ほど家を離れる。
「行ってらっしゃい」
「行ってくるよ」
2人は抱き合い、玄関の扉が閉まるまで愛は太一を見送る。
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