June pride

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 今日は高校の同級生である高山陽介の結婚式だ。オレ達は約半年前、二年半に渡る同居生活をしていた。まぁ同居と言っても、それぞれの生活時間は少しズレていたので、ただ部屋を借りている……という感覚で、顔を合わせていた時間を合計すれば、それほど長い期間にはならないのかもしれないが。  今思うとそれが功を奏したのか、最初は家を見つけるまでのほんの少しの間だけ居候するはずが、ずるずると二年半という長い年月になってしまったのかもしれない。  去年のオレの誕生日に、付き合っていた彼女との結婚を打ち明けられ、去年末には彼女と同棲生活を始めるため、陽介は部屋を出て行った。誕生日プレゼントとして部屋の譲渡契約書を受け取ったので、オレだけが未だに陽介の出て行った部屋で一人、生活をしている。  しかし、一人暮らしとなったこの半年の間に、陽介は三度ほど部屋を訪れた。  一度目は『オレの生存確認』と称して夜に突然訪れ、姑のように家事の不出来をチェックした後、一緒に育てた家庭菜園のトマトを使い、トマトクリームソースのパスタを作って一緒に食べた。  二度目はオレの誘いで休日に映画のDVDを一緒に見て、レトロゲームで遊んだ後、「泊まっていけよ」と言うオレの誘惑を断って帰って行った。  三度目は「プレゼントがある」と言って突然現れ、式の招待状とこのネクタイを渡してすぐに帰ったのだ。 「絶対に来いよ?」  最後にはそう念を押された。まるでオレの心を見透かすかのように。  一度目の訪問で陽介から、「今度三人で食事をしないか?」と誘われたが、オレは「嫌だ」と言って断った。「何でだよ?」と理由を訊かれたが、オレは何も言わなかった。  去年の誕生日、陽介から貰ったあの箱をオレは開けたくなかった。あのプレゼントを仕組んだのは、陽介の彼女だと聞いている。 (女狐め!!)  あの日に初めて、陽介に彼女がいることを知った。陽介はオレと比べたら幾分地味な顔立ちで、家事が出来る分女子力が高い。見るからに『草食系男子』なので、オレが考える男としてのフェロモンが微塵も感じられず、(たか)(くく)っていたらこの有様だ。知らぬ間に女狐が、横から陽介の心を掻っ攫っていた。 (どうせろくでもない女に決まってる)  陽介からプロポーズされた時の指輪ケースを使い、オレにドッキリを仕掛けるような女だ。何故俺が、一度も会ったことの無い女に()められなければならないのか。だから陽介の彼女と三人で会うのなんて御免だと、誘いを断った。それ以外に理由は無い!  それに、いずれにせよこの結婚式で、彼女とは顔を合わせるはずなのだから……。
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