7 ステファニーはどこにいる?

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   「あの木です」  赤間さんが指し示す光は、まるで薄暗い劇場内の舞台上にある一点を観客に注目させるためのスポットライトのように、朱色の祠から少し離れた位置にある木の幹を照らす。  空はまだ茜色の明るさを少し残しているものの、地上はすでに夜になっていた。  草木が生い茂る佐藤さんちのお庭は奥に目線をやるほど、のっぺりと暗く見えて、いくら子供の頃から知っている地元の場所であっても、祠の周辺はもはや心霊的に怖すぎるムードが満載でヤバい感じになっている。  祠の背後の闇から、ヌッと『幽霊男性』が今にも現れそうな雰囲気へと変貌していた、怖すぎる。  こわいなーこわいなー…と思いながらも、変わらずに淡々と説明をしてくれる赤間さんの冷静さとカッコよさに励まされ、自分一人だったら絶対目ぇ逸らしちゃうくらいに怖いムードへと変貌した佐藤さんちのお庭の、光に照らされた一本の木の幹をぎゅっと見つめる。  (勝手に人んちの庭をのぞいて、勝手に不気味がって怖がるっていうのも、今になって考えてみれば、失礼な話だよね。佐藤さんちのおばあちゃんは普通に毎日ここで暮らしてるっていうのにさ。ちなみにおばあちゃんは私と赤間さんがこうしている間、おうちの中にいるっぽかった)  赤間さんが指し示す光は、まるで猫が実際に木をのぼっていくルートを再生しているかのように、ゆっくりと、幹の根元の方から上へ、そして枝の方へと移動していく。  「あの木の、ほら、あの部分の枝が折れているのが分かりますか。  あの枝の折れ方は、例えば…猫が、朱色の小屋の屋根にあがってから、ちょうどいい太さの枝に飛び移ろうとして体重をかけたときに、先端に近いあの位置の細い枝を足で折ってしまったと考えられないでしょうか。  そして今度は、もう少し上にあるあの枝に手をかけて…この位置、猫が引っ搔いたように見える爪の跡らしき傷が、枝に残っていますね」  「本当だ…! 確かにそうですね、すごい…」  口頭で詳しく説明をしてくれながら、赤間さんが懐中電灯の光でステファニーちゃんがのぼっていったと思われるルートを指し示してくれることで、私の脳内には自然と、本当に自分の目で見ていたかのようにステファニーちゃんが重たい体で一生懸命に木をのぼっていく光景が脳内に浮かんでくる。  「ということは、ステファニーちゃんは今、この木の上にいる…?」  それまで私の視線を誘導してくれていた赤間さんの光を追い抜かすようにして、顔を上げた私は、ステファニーちゃんがのぼっていったと思しき木のてっぺんまで見上げてみる。  しかし、ざわざわと葉が生い茂るそこは、もう真っ暗な闇のかたまりと化していて、どこかの枝の上に白い猫が身を潜めているのかどうかも見分けることができない。  
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