9 真夏の夜、まだまだ飲み明かそう!

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9 真夏の夜、まだまだ飲み明かそう!

   「つまり…今の怪談話って、幽霊系というよりは人怖話だったってこと?」  こうして私が語り終えた長い怪談話を最後まで聞いたマキは、空のワイングラスを片手に、眉間にシワを寄せつつ険しい顔で、正面に座っている私をジッとにらむようにして見つめながら、そのように唸った。  もうかなり酔っぱらってきている私は、へへへ…と笑いながら答える。  なんかもう長くしゃべりすぎて、私の頭には半分霞がかかってるみたいに思考がフワフワと白くぼんやりしている。  「ねー、大スペクタクルにスーパーミラクルで、怖くて不思議な話だったでしょぉー?」  「夜道でアンタを襲ってきたのは、金の指輪を狙っていた不審者だったってわけで、結局のところ一番怖いのは生きている人間…ってオチ?  それとも、幽霊を目撃したと思ったらそれは病気の症状だったっていう話からしたら、幽霊なんかより病気の方が人間にとっては怖いよねっていう教訓的なのをそこはかとなく感じとればいいの?  ていうか、今の怪談話の中にガチの幽霊って登場したの?  その、マナがバイトしてた眼科のまわりに出没していた黒い影ってのは、幽霊じゃなくて、例の不審者かあるいは喫煙中の赤間さんで、つまり生きてる人間がすべてその正体だったってわけ?」  「そうなの~、もう赤間さんはぁ、大スペクタクルにスーパーミラクルかっこよかったのぉー、まじイケメンで紳士でクールでかっこよくてぇ~…」  もう深夜の2時になっていた。  ここまでずっとしゃべりながらひたすら飲み続けていた私の頭のなかは、一度に一個のことを考えるだけで、いっぱいいっぱいで、赤間さんの名前を聞くだけでもう、あの赤間さんのクールでカッコイイ姿が脳内に浮かびあがってきて、最高にハッピーな気持ちになる。  そしたらなんか、私よりはずっと落ち着いているように見えて、さすがに酔いが回っていたらしいマキも、私につられるようにしていきなりテンション爆上げになる。  「それよ! それ!! 結局いまの話って、怪談話っていうかマナの失恋話じゃない!?  交通事故に遭った身元不明の人物はなんだったのかとか、なんで不審者が金の指輪の存在を知ってたうえでわざわざピンポイントに探し回っていたのかとか、家庭の事情があったとしても赤間さんが深夜にその眼科へやってくる理由というか先生との関係にも妙に違和感あるっていうか、なんかあれこれ気になる部分も残ってるカンジするけど、なんかもうそういうのどうでもいいわ!  そのあと赤間さんとはどうなったの!?  今でも会ってたりするの? 連絡先は分かってるわけ?  てか写真とかないの? そんなにイケメンなんだったら赤間さん見てみたいんだけどー!!」  深夜だっていうのは、赤間さんの話でキャッキャと私たち二人は盛り上がる。  それだけ騒いでいても、床に転がって寝ている他の子たちはぜんぜん目を覚まさない、ぐっすりと身動きもせずに眠こけている。  
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