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「 俺たち学生も、召集されるらしいぞ。どうせなら、俺は、特攻に志願する。敵の弾に当たって死ぬより、役に立って死ぬ方がいいからな 」
特攻隊か、、、、僕は、考えてもみなかった。
友人が言った通り、僕たちにも召集令状が来た。
とうとう来たか。その時思ったのは、桜子さん、あなたのことだたった。一度でいい。
言葉を交わしたかった。
その願いは叶った。大学からの帰り道、桜子さん、あなたは、ぬかるみの中で歩けなくなっていた。
「 大丈夫ですか? 」
僕は、あなたの靴を、持っていた格子柄のハンカチで拭いた。
「 ありがとうございます。あの替わりにこれを 」
あなたは、そう言って、花柄のハンカチを、僕に渡してくれた。
「 こんなに綺麗な物を。ありがとうございます。僕は、原田太郎と申します 」
「 私は、香山桜子と申します 」
「 しらうおのような手ですね。とても綺麗だ。綺麗なのは 」
それ以上なにも言えなかった。僕の心臓は高鳴り、顔は赤くなった。
桜子さん、あなたも同じく頬を赤く染めていた。
それから、僕は入隊した。
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