愛するあなたに

2/19
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
「 俺たち学生も、召集されるらしいぞ。どうせなら、俺は、特攻に志願する。敵の弾に当たって死ぬより、役に立って死ぬ方がいいからな 」 特攻隊か、、、、僕は、考えてもみなかった。 友人が言った通り、僕たちにも召集令状が来た。 とうとう来たか。その時思ったのは、桜子さん、あなたのことだたった。一度でいい。 言葉を交わしたかった。 その願いは叶った。大学からの帰り道、桜子さん、あなたは、ぬかるみの中で歩けなくなっていた。 「 大丈夫ですか? 」 僕は、あなたの靴を、持っていた格子柄のハンカチで拭いた。 「 ありがとうございます。あの替わりにこれを 」 あなたは、そう言って、花柄のハンカチを、僕に渡してくれた。 「 こんなに綺麗な物を。ありがとうございます。僕は、原田太郎と申します 」 「 私は、香山桜子と申します 」 「 しらうおのような手ですね。とても綺麗だ。綺麗なのは 」 それ以上なにも言えなかった。僕の心臓は高鳴り、顔は赤くなった。 桜子さん、あなたも同じく頬を赤く染めていた。 それから、僕は入隊した。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!