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僕と同じ、東大の学生も沢山入隊した。
僕を、からかった友人は、特攻に志願した。
僕の配属部隊は、レイテ島だった。
「 レイテ島になんて行ったら、もう日本に帰って来れないわ 」
母は、泣きに泣いた。僕は、何も考えてはいなかった。悲しみのあまり、何も考えられなかったのだ。
僕に、父親はいない。僕が、G中学時代に
病気で亡くなった。
「 お母さんを頼む 」
最期にそう言って、僕の手をしっかりと握った。
母を守ることなく僕は、死ぬのだろうか?
僕たち大学生を乗せて、戦艦はレイテ島へと向かった。
海軍将校は、とてつもなく威張っている。
でも、死ぬ時は死ぬのだ。威張ってどうするのだろう。
南の海は、綺麗な透き通った色をしている。海に見とれていると、何をしている!
と、殴られた。
木村さんと言う名前の、海軍将校は、僕たち東大組に優しい。木村さんも東大出身だからだ。
木村さんは、訛りのある話し方をする。福島県出身だと言った。
ある夏の日、敵機の攻撃を受けた。僕と木村さんは、戦艦の前列にいた。
「 危ない! 」
僕は、木村さんを思わず庇った。僕の右腕は弾に打たれた。
攻撃は酷かった。戦艦が沈んで行く。
意識が朦朧とする中、僕は、桜子さん、桜子さん、あなたの名前を呼んだ。
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