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「 レイテ島から? まさか! 」
「 その、まさかなんだよ! 原田君は、僕を庇ってくれたんだ。ありがたかったなあ 」
「 戦争は? 」
「 終わったよ。日本は負けた 」
「 そうですか 」
日本に勝ち目はないとは聞いていた。その通りだった。
「 先生様、原田さんに何か食べて頂いてもよろしいだすか? 」
「 食欲があれば大丈夫です。お粥か、卵のおじやとか 」
輝く人は、おっしゃった。
「 何か食べたいものは? 」
先生に訊かれて
「 卵のおじやが食べたいです 」
「 あなたは、東京の方ですね? 」
「 はい。目白です。先生も 」
僕は、苦しい顔をしたらしい。
「 無理して話をしなくていいんです。今、ペニシリンを打ちましたから。食べたら眠くなります 」
先生のおっしゃった通り、卵のおじやを食べた後眠くなった。
そばに、木村さんのお母さんと、輝く先生がいてくださった。
熱にうなされている僕の額に、冷たい手拭いを当ててくださった。お母さんの匂いがした。
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