31人が本棚に入れています
本棚に追加
それから一晩熟考し、翠香は彼の誘いを断った。反乱を起こし皇帝の軍隊と戦争になれば、国は再び荒れる。皇帝が噂通りの強者なら相当に苦戦を強いられるだろう。それならば後宮にもぐりこんで皇帝の寝首をかく方がいいと思ったのだ。
皇帝に危害を加えれば、もちろんただではすまされない。刺し違えることも考えられる。それでも翠香に迷いはなかった。父たちを見殺しにしておきながら玉座でのうのうとしている皇帝が許せなかった。
廷珪は「それが君の戦い方なら」と翠香の考えを受け入れ、重要な情報を残して村を去った。
「俺は君の父上の最期を見たけど、君の弟については朱丘の戦いでは姿さえ見てない。もしかしたら、どこかで生きているかもしれない」
*
「あの、翠香様? 大丈夫ですか?」
加亮に顔をのぞき込まれ、翠香ははっと我に返った。
いつの間に後宮の門前まで来ていた。広大な敷地は土壁と堀で囲まれ、門や堀にかかる橋には強面の衛兵がずらりと並んでいる。ものものしい雰囲気に翠香は気圧されそうになった。
最初のコメントを投稿しよう!