第二章 苦しくも幸せな時間

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 逃げたくても体が言う事を聞かず、私はそのままカラスに咥えられてしまう。ゆっくりと地上から離れていく私を見上げ、かつじゅ君は泣き叫んだ。 「ノーアーーーーッ ! うわーー、やめて……ノーアを返してーーーーっ !」  空へ羽ばたくカラスへ、かつじゅ君は地面へ転がっている小石を必死に投げつける。  すると、小石を体に当てられて驚いたカラスは、私を口から離した。そして、私は上空から落下していく。そんな私を、かつじゅ君がしっかりと両手でキャッチしてくれた。 「ノーア……大丈夫 ? 怪我は無い ? ふう……無事で良かったよ」    かつじゅ君、私を助けてくれて嬉しいよ。とっても、貴方はかっこよかった。  ちゃんと、ありがとうが言いたいのに、今日も口を動かせないなんて悲しいね。  私も、人間になりたいな…………。
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