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「ああ、あいつはお前に似て本当に心が綺麗だよ。……普通、誕生日プレゼントに男の子がこんな物を欲しがったりしないからね。きっと、最新のおもちゃとかゲームにも興味があっただろうけど、あいつはお前の為にこの人形を選んだんだよ」
「……ううっ、嬉しくて涙が止まらないわ。私、持病のせいで後何年生きられるか分からないけど、これは孫の顔を見るまでは死ねないわね」
お母さんがそんな言葉を発すると、お父さんが慌てて注意する。
「こ、こらっ……その事はあいつに隠しているんだから、あまり大きい声で話すな。もし、聞かれでもしたらどうする ? これは、とても七歳の子供が受け止められる内容じゃない」
黙り込むお母さんに、お父さんは続けて言った。
「……この人形の容姿や服装はな、全てあいつがこうしろと俺に指示を出してきたんだぞ。ずっと好きでいないといけない子だから、自分の理想通りにするって一生懸命になってた。そこまでして、あいつはお前の喜ぶ顔が見たいんだな」
「そう……なのね。プロの人形職人に口出しするなんて、将来が楽しみね。なんとか、この病に勝って、私はあの子が貴方みたいな立派な大人になる姿をこの目に焼き付けるわ」
声を潜め、お母さんはそう口にした。そして、涙で顔を濡らし、二人は無言のまま互いを強く抱きしめる。
ぱっちりとしたピンクの大きな瞳に程よく高い鼻、透き通った白い肌にちょこんと付いたアヒル口……そんなフランス人形の様な顔立ちに私が仕上がったのは、かつじゅ君のおかげなのね。
ひらひらの上品で可愛いドレスは、私にとても似合っている。かつじゅ君、ありがとう……汚さない様に大切にするわ。
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