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ドタドタと足音を立てて、かつじゅ君が再びダイニングルームへ戻ってくる。
「お待たせ……準備出来たよ」
「よし、それじゃあお祝いを始めるか」
キャンドルに火を灯し、皆が席に座った事を確認すると、父は部屋の電気を消した。
暗闇の中で輝く七つの光に見惚れていると、お父さんとお母さんが声を揃え、手拍子しながら歌い出す。
いいな……私も歌いたいな。リズムに合わせて手も叩きたい。それなのに、私の体は全く動かないの。
「ハッピーバースデートゥーユー、ハッピーバースデートゥーユー。ハッピーバースデーディアかつじゅー」
「それから、僕の花嫁ー」
かつじゅ君はそう歌って、私に隣から眩しい笑顔を見せる。キャンドルの炎に照らされた純粋な彼は、何よりも美しかったわ。
「ハッピーバースデートゥーユーッ !」
お父さんとお母さんが歌い終わると、かつじゅ君はキャンドルの光を吹き消す。その瞬間、辺りは真っ暗になって何も見えなくなった。
「お誕生日おめでとうーーっ !」
ああ……私も、お母さん達とそう言いたかった。でも、この重い口が開こうとしないの。
部屋が明るくなり、かつじゅ君が私にとても小さな紙包を差し出した。
「はい、これ……君にあげるよ。今日から君は、ここの家族の一員だよ。この家にやって来てくれて、ありがとう」
お人形の私に話しかけてくれるなんて、かつじゅ君は本当に優しい子ね。だけど、私はお人形だから貴方に返事が出来ないわ……なんだか、ごめんなさいね。
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