第一章 素敵な誕生日

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 折り紙で作られた袋から、かつじゅ君は五百円玉くらいの大きさの華やかな花かんむりを取り出した。そして、それを私の頭にそっと乗せる。 「サイズが合って良かったよ。……ねえ、僕と結婚してよ。君を絶対に幸せにするから」  私の答えは、勿論イエスよ。だって、こんな素敵な男の子にプロポーズをされて、断る理由がないもの。それなのに、頷く事さえも出来なくて申し訳ないわ。  おしゃれなお皿を私の目の前に置き、かつじゅ君は私にもケーキを分けてくれた。それを見て、お母さんがかつじゅ君に微笑む。 「あら、かつじゅ……その子にもケーキを食べさせてあげるのね。貴方は、本当に良い子ね」 「あげるに決まってるじゃん。だって、この子は僕のお嫁さんだからね。お母さん……僕ね、この子と結婚するよ。嬉しい ?」 「ええ、とっても嬉しいわ。かつじゅ……結婚おめでとう」 「ありがとうお母さん……僕とこの子の結婚式へようこそ」  かつじゅ君はお母さんにそう言うと、次に私に優しく声をかけた。 「どう ? ケーキ美味しい ?」  私も、このケーキが食べたい。それで、「美味しいよ」とかつじゅ君に伝えて、笑顔でお礼が言いたいの。  だけどね、手も口もビクともしないの。何の反応も出来なくてごめんね。 「最後に、君に名前をプレゼントするよ。君はノーアだよ。素敵な名前でしょ ? 君の顔を見た時に、パッと頭に浮かんだ名前なんだ」  ええ、とっても良い名前ね。名無しの私に、名前をくれてありがとう……かつじゅ君。  二月二日、今日は私とかつじゅ君の素敵な誕生日。とても、幸せな時間を過ごせたわ。それなのに、なんだか寂しい。  本当は私も、皆と一緒に誕生日パーティーを楽しみたいわ。だけど、そんな私の願いは叶わない。  だって、私はただの人形だから…………。
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