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第一章 素敵な誕生日
雪のシャワーが降り注ぐ素敵な夜。
洋風でオシャレな小さなお家で、私は誕生した。
桜色のクルクルとした私の長い髪を、眼鏡をかけた小太りの男性がくしで綺麗にといてくれる。そして、椅子から腰を上げ、くりくりとした瞳の可愛い男の子に、私を差し出した。
「ほら、かつじゅ……ついに完成したよ。お誕生日、おめでとう」
「わーっ ! ありがとうお父さん……とっても嬉しいよ。僕、この子をずーっと大切にするね。だって、この子は僕のお嫁さんだから」
私を優しく包み込み、かつじゅと呼ばれたその男の子は満面の笑みを浮かべる。そして、誕生日ケーキが置かれたダイニングテーブルに私を丁寧に座らせ、彼はこう言って部屋から出て行った。
「ねえ、ちょっと待ってて。……今日の主役は僕だけじゃないよ。この子が生まれたのも今日だから、この子も誕生日は僕と一緒だ。この子へのプレゼント、急いで持ってくるね」
長さの同じ七本のキャンドルをケーキに立て、青白い顔をした小柄な女性は首を傾げる。
「かつじゅ……どうして、こんなお人形なんかを欲しがったのかしら。それに、この子がお嫁さんってどういう事なの ?」
「……ああ、実はさ……お前が居ない時に、俺はかつじゅに頼まれたんだ。僕のお嫁さんを作って欲しいってな。早くお母さんの願いを叶えれば、お母さんは元気になってくれる……それで、もう入院する事もなくなるよね……あいつは、そう言ってたぞ」
コップにドリンクを注ぎながら、お父さんはそう答えた。
すると、お母さんは瞳から涙を流し、嬉しそうに微笑む。
「グスン……あの子ったら、貴方が素敵なお嫁さんと結婚する姿を、お母さんは死ぬ前に見たいわ……って私が言ったのをまだ覚えていたのね。それで、プロの人形職人である貴方に、可愛いお嫁さんを作ってもらったって訳……あの子は本当に良い子よ。私の大切な自慢の息子」
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