0人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
「あの、ちょっと!」
そう言って、遠藤はすれ違いざまに男の肩を掴んで制止しようとした。しかしその男は一瞬遠藤の方へチラリと目を向けただけで構わずずんずん進み出した。この男の不可解な行動が遠藤の疑心をより一層強固なものにした。
どうしたって声をかけられてそのまま立ち去ろうとするものがあるだろうか。
何かやましいことがあるに違いなかった。
「おい!あんた!」
その男の予想外の反応にかっとなって、遠藤はさらに強い力でその肩をぐっと掴んだ。男もこれには多少驚いたのか、一瞬立ち止まった。
しかし、すぐに強い力で彼の手を振り解くと、そのまま小走りでその場を立ち去ろうとしたのだ。
遠藤は酒が大分入っていたこともあって、これでとうとう頭にきてしまった。そしてその怒りに任せるまま、男に飛びついてその傘を無理に奪い取ろうとした。
「この傘はあの居酒屋に置いてあったものだろう!」
最初のコメントを投稿しよう!