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遠藤は一瞬何のことやら分からず唖然として、「はい?」と間抜けな声で返答した。
「傘を忘れて行かれましたから。それで降り出したものだから戻ってきたんでしょう。」
「か、傘ですか…確かに忘れていきましたが…今はもう無くなっているでしょうね?」
「いえ、まさか。店に預けておられたでしょう。まだちゃんとありますよ。今お持ちしますから。」
店主はそう言って、奥の方へ入っていった。
店主の言うことは全く正しかった。
遠藤は確かに傘を店に預けていたのだ。
その時彼は別に意識するでもなく店の中に傘を持ち込んでしまい、それを店主に指摘されたのでその時に傘を渡しておいた。
そしてその事をすっかり忘れてしまっていた。
酒が回っていたことも相まって、今の今まで、普段はそうするように店の前の傘立てにさしていた気になっていたのだ。
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