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5年前、ジェシカがまだ宇宙海賊だったころ、彼女の父は「銀河の宝」とまで称された虹色の杯を手に入れた。
だが、その杯を奪いに来た別の宇宙海賊がジェシカを人質にとったのだ。
「娘を返してほしければ、その杯を俺たちに渡せ!」
恐怖のあまり、当時14歳だったジェシカは、声を出すことが出来なかった。
すると、彼女の父は、
「……分かった」
「お頭!」
部下たちが叫ぶ中、ジェシカの父は、
「娘の命には代えられない……だが、先に娘を放してもらおう。杯を渡すのはその後だ」
「だめだ! 先に渡せ!」
「ならばこうしよう……」
ジェシカの父は懐から拳銃を取り出し、男の方へ転がした。
「杯を持った俺が、お前さんたちの前に行ったら、すぐに娘を解放しろ。仮に、俺が杯を渡さず、娘と逃亡すれば、その銃で俺を撃てばいい。これでどうだ?」
「いいだろう」
相手が条件をのんだのを確認し、ジェシカの父はポルトに告げた。
「……ポルト、娘や皆を頼む」
「……兄貴?」
ジェシカの父が男の目の前に行くと、ジェシカはようやく解放された。
「虹色の杯だ……受け取れ」
ジェシカの父が男に杯の入った箱を渡そうとした瞬間、1発の銃声が鳴る。
「父さん?!」
「……やっぱり、そう来ると……思った」
ジェシカの父は胸から血を流していた。
「賞金首ゲット! 杯なんてのは二の次だ。まんまと引っかかったな!」
男は大声で笑う。
「さて、引っかかったのはどちらかな?」
「何?」
男が箱を開けると、中には……。
「ば、爆弾?!」
だが、気が付いた時には遅かった。爆弾のカウントは残り3秒――。
「振り返るな、ジェシカ……前を見ろ!」
ジェシカの父は、この言葉を最後にこの世を去った。
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