43.「では、そちらにお通しして頂戴。……話を聞くわ」

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(……彼女が、何かをしたとは考えられないかしら?)  タイミング的に、その可能性はゼロではない。そもそも、結界を壊すためには聖女である必要があるのだ。聖女ではないと、結界を壊すことも張ることもできない。エイリーンは聖女見習いだというし、結界を張るための部屋に入る資格はある。 (結界は、張るのは大変だけれど壊すのは簡単よ。……力が小さくても、出来るもの)  エイリーンは聖女『見習い』なのだ。そこまで強い力は持っていないだろうし、高度なことが出来るとは思えない。  でも、壊すくらいならばできる。  物を壊すことは簡単なのだ。修理することは難しいが、壊すのならば赤子だって出来てしまう。 (まぁ、彼女がどう出てくるかはわからないけれど……何か握っていることは、確かなはずだわ)  たとえエイリーン自身が結界を壊したわけではなかったとしても。彼女が誰かに情報を漏らした可能性だってあるのだ。そう思い、ドロシーは第三休憩室の前に立つ。  一度だけ深呼吸をして、扉を開ける。すると、中にはエイリーンがいた。その傍にはダニエルもおり、彼はしかめっ面でエイリーンを見据えている。 「お初にお目にかかります。ドロシー・ハートフィールドでございます」  一応とばかりにそう挨拶をすれば、エイリーンは下唇をかみしめる。それから、「……エイリーン・ブラックウェル、よ」と消え入りそうなほど小さな声で自己紹介を返してきた。 「ところで、私に一体どんな要件でしょうか? 私はこれでも忙しい身なのです」  あまり長い時間を取ることは出来ないぞ。遠回しにそう伝えれば、エイリーンは「……わかっている、わ」と返事をする。その後、その真っ青な目でドロシーのことを見据える。その目の奥は、何かに怯えるように揺れていた。
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