44.「そんなもの、どうだっていいのよ」

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「私は侯爵家の娘ですもの。いくら王子殿下だったとしても、蔑ろに出来る身分ではありませんわ」  もしも、ドロシーが男爵家や子爵家の令嬢だったならば。王子であるルーシャンが蔑ろにしたところで問題はない。けれど、ドロシーは王国でも名門に名を連ねる侯爵家の娘なのだ。蔑ろにされてしまえば王国に打撃がある。もちろん、王家にも。 「……でも、わたくしはブラックウェル公爵家の娘よ? 貴女よりも身分が……」 「そんなもの、どうだっていいのよ」  エイリーンの言葉を蹴り飛ばし、ドロシーは不敵に笑う。 「ルーシャン殿下は私の夫。そこに愛情がなかろうがあろうが、貴族の結婚とはそういうものです。……恋心があるからとか、身分が上とか。そういうの関係ないのよ。これはいわゆるビジネスだもの」  王侯貴族の結婚はいわばビジネスだ。互いにメリットがあるから結ばれるもの。そう、ドロシーは考えている。それに、ルーシャンに妻に選ばれたのは事実エイリーンではなくドロシーなのだ。それは、親同士が『こちらの方がメリットがある』と判断したからでしかない。そこに、互いの感情など必要ない。 「……で、ですが、仲睦まじく過ごす以上に大切なことが――」 「――あるのよ」  エイリーンの言葉を蹴り飛ばし、ドロシーは妖艶に笑う。それは彼女自身の美貌を嫌というほど引き立て、大層美しい。
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