45.「あんた、本当に最低ね」

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 その仕草を見つめ、ドロシーは確証を持った。彼女は何かに関わっている。そう思い、ドロシーは不敵に笑う。 「貴女のしたことは、大罪よ。……このネイピア王国を危険に晒しているのだもの」  ゆっくりとそう告げれば、エイリーンの青色の目が揺れた。その目を見つめ、ドロシーは「ふぅ」と息を吐く。その仕草を見たためか、エイリーンの肩がびくんと大きく跳ねた。……やはり、結界を壊したのは彼女なのか。 「どうして、そんなことをしたのかしら」  表情を緩めることはせずにドロシーがそう問えば、彼女は「……だ、だって」と震える声で言葉を絞り出す。その青色の目はうるんでおり、今にも泣きだしそうだ。  もしかしたら、こういう庇護欲をそそる女性が好きな男性ならば、この仕草に胸を打たれるのだろうか。まぁ、生憎ドロシーは女性であり、エイリーンの仕草に同情どころか殺意が芽生えているのだが。 「あ、貴女よりもわたくしの方が優れていると証明すれば……ルーシャン殿下も、わたくしを見てくれると思ったのよ……!」  胸の前で手をぎゅっと握りしめ、エイリーンはそう言葉を紡ぐ。……つまり、恋に溺れた結果の哀れな犯行だということか。  そう思い、ドロシーはゆっくりと立ち上がりエイリーンに近づいていく。 (身勝手にもほどがあるわね)  内心でそう思い、ソファーに腰掛けるエイリーンのことを見下ろした。その紫色の目には、何の感情も宿っていない。ただ、あえて言うのならば……そうだ。怒りにも似たような表情が宿っている。
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