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「……貴女、結界を壊してどういう風に私よりも優れていると証明するつもりだったのよ?」
凛とした声でそう問えば、エイリーンは「わ、わたくしが魔物を退治する、もしくはもう一度結界を張りなおせば……」と震える声で告げる。
ふざけるな。
エイリーンの言葉に、ドロシーは内心でそう思いながら――その手を振りかぶりエイリーンの頬を思いきりぶった。
「――っ!」
エイリーンの身体がソファーに倒れこむ。彼女は何が起きたのかわからず目をぱちぱちと瞬かせたかと思えば、次の瞬間にはドロシーを強くにらみつけていた。
「な、なにを――っ!」
そう言おうとしたものの、エイリーンはすぐにハッとして息を呑む。……それほどまでに、ドロシーの表情は怒りに満ちていた。
「あんた、本当に最低ね」
相手が公爵令嬢であり、自分よりも一応身分が高いことなどお構いなかった。静かな声でそう告げ、ドロシーはその場で踵を返す。
「自分の力を示すため? バカじゃないの? 自分の力を過信することが、破滅への一歩になるとどうして気が付かないの?」
エイリーンに背を向けたままドロシーがそう続ける。エイリーンはただ俯きながら、ドロシーの言葉に耳を傾けていた。
「本当に考えなしの人間って大っ嫌いだわ。……そういうの、最大の身勝手ね」
「……そ、そんなの!」
「何? それとも、貴女は自分のことを相手にしないルーシャン殿下が悪いと、おっしゃるの?」
エイリーンに視線を向けてそう問えば、エイリーンが息を呑むのがわかった。そのため、ドロシーは容赦なく続ける。
「そんな身勝手な理由で兵士や騎士、王子殿下方は魔物退治に駆り出されているのよ? ……少しは、罪悪感を抱かないの?」
「……」
「見事な責任転嫁ね。……そういうの、本当に最低だわ」
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