45.「あんた、本当に最低ね」

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 そんな言葉をぶつけ終えると、ドロシーは部屋の扉を開けダニエルを呼ぶ。すると、彼はすぐにドロシーの元に駆けつけてくれた。 「エイリーン様が結界の破壊を認めたわ。兵士の元に連れて行って頂戴」 「……かしこまりました」  ドロシーの言葉にダニエルは一瞬だけ驚いたように目を見開くものの、すぐにエイリーンの元に寄る。そして、「行きましょうか」と彼女に声をかけていた。  エイリーンはドロシーの言葉が胸に突き刺さってしまったのか、ぼんやりとしながらダニエルに連れていかれる。 (犯人は確保したけれど……まだまだ、状態が安定しているとは言えないわね)  やはり、結界を張り終えるまでは油断なんてできない。そう判断し、ドロシーは部隊の指揮を執るために元の部屋へと戻ろうと足を動かす。 「……ルーシャン殿下」  そっと天井を見上げながら、ドロシーは彼の名前を呼ぶ。 (あんな風に身勝手な行動をされたら、そりゃあ女性嫌いにもなるってか)  エイリーンはルーシャンに恋い焦がれるあまり暴走した。きっと、彼は幼少期からそういう女性を数多く見てきたのだろう。自分の容姿に狂わされる人間の姿を。  そんなものを見続けていれば、自然と女性のことを嫌悪し引きこもりになる。……なんとなく、納得が出来たような気がした。 (私とはまた違った意味で、あのお方も大変だったのよね)  ドロシーは幼少期から男性の欲望をまとったような視線を浴びせられてきた。だからこそ、男性のことが苦手になった。いつしか他者とのかかわりを捨て、引きこもるようになっていた。 (まぁ、帰ってきたら労いの言葉の一つくらいはかけてあげましょうか)  内心でそう零し、ドロシーは部屋に戻るために歩く。  優雅に、焦らずに。あくまでも――淑女らしく。
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