46.「……あぁ、終わったのね。……よかったわ」

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 それから五日後。ドロシーはこの日も後方支援部隊の指揮を執っていた。とはいっても、ディアドラ曰く結界はもうすぐ出来上がるらしく、もうじきドロシーの仕事も終わりになる。それにほっと息を吐いていれば、王城の従者がドロシーの方に駆けてきた。 「ドロシー様。王妃様より、結界を張り終えることが出来たと、ご報告です!」 「……そう」  従者の言葉に、ドロシーはほっと息をついて――その場に崩れ落ちた。その様子を見つめ、リリーが慌てて駆け寄ってくる。 「お嬢様!」 「……ふふっ、大丈夫よ」  慌てふためくリリーにそう言葉を告げ、ドロシーは小さな笑みを浮かべた。その表情は年相応の可愛らしいものであり、周囲の人間がくぎ付けになる。  今までは極度の緊張状態にあったためか、彼らの意識はドロシーの容姿にまで向けられなかった。が、緊張がほどけ始めた今、彼らはドロシーの整いすぎた容姿に視線を次々に奪われてしまう。  さらにそこに年相応の無邪気な笑みが加われば……大抵の人間は恋の弓矢で射貫かれてしまうだろう。もちろん、女性も呆然と彼女のことを見つめている。 「……あぁ、終わったのね。……よかったわ」  小さくそう言葉を零せば、周囲の人たちもゆっくりと声を上げ始める。約一ヶ月の戦いが、ここで幕を閉じたのだ。それに息を吐いていれば、部屋の扉がノックされる。それに返事をすれば、顔を見せたのはディアドラだった。彼女は「お疲れ様でした」と言いながら部屋に入ってくる。
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