46.「……あぁ、終わったのね。……よかったわ」

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「……王妃様。この度は、本当にありがとうございました」  ドロシーが深々と一礼をし言葉を告げれば、ディアドラは「いえ、ドロシーさんのおかげでもあるのよ」と言いながらころころと笑う。 「貴女が後方支援の指揮を執ってくれたから、私は結界を張ることに集中できたわ。……こちらこそ、ありがとう」  その目を細めながらディアドラはそう言う。そんな彼女の姿は、さすがはあの自由奔放な国王を射止めた女性とたたえられそうなほどに美しい。ドロシーでさえ、彼女のことを呆然と見つめてしまうレベルなのだから。 「ですが、まだまだ油断はなりません。……きちんとみなの無事を確認してからではないと、手放しで喜べないわ」  しかし、ディアドラはすぐにそう言って周囲の気を引き締めさせる。  その言葉を聞いたためだろうか。周囲の人間たちは帰ってくる兵士や騎士たちの治療の準備を始める。 「……ドロシーさん。本当に、ありがとう」  彼らを一瞥し、ディアドラはドロシーにだけ聞こえるような小さな声量でそう告げた。そのため、ドロシーは大きく目を見開いてしまう。 「貴女がいなかったら、本当にこの戦いは無謀なものだったわ」 「……いえ、そんな」  ディアドラの褒め言葉は素直に嬉しいものだ。そんな風に思い微かに頬を染めていれば、ディアドラは「……貴女にならば、ルーシャンを本当に任せられるわ」と告げてくる。その所為で、一気に現実に引き戻されてしまった。 (……ルーシャン殿下)  今回のことで、彼は何らかの責任を取らされるのだろうか。エイリーンの行動の根本の原因はルーシャンである。もしも、彼がしっかりとエイリーンを振っていれば。そう言う風に揚げ足を取ろうとする人間は一定数居るはずだ。
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