48.「ドロシー様。……行きましょうか」

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 結局先に折れたのはダニエルの方だった。  そのため、ドロシーはダニエルの乗ってきた馬車に同乗させてもらい、王城へと向かう。 「皆様の傷の具合はどんな感じ?」 「大体の者が軽傷でございます。ルーシャン殿下が最も傷が深いということで……」  馬車の中でドロシーとダニエルが会話を交わす。内容は主に兵士や騎士、王子たちの怪我の具合の話だ。 「一応ポーションはたくさん作ってあるから、自由に使って頂戴。王妃様にもそこはお伝えしているけれど」 「かしこまりました」  ドロシーの言葉にダニエルが深々と頭を下げてそう言う。  そんな風にしていれば、馬車はあっという間に王城にたどり着いた。今日はいつもとは違い王城の裏手から入るということになっており、裏口の近くに馬車を止める。その近くにはたくさんの馬車や馬が止まっており、どうやら魔物退治の部隊が帰還しているようだ。  ダニエルが一足先に馬車を降り、ドロシーが降りるのを手助けしてくれる。そうしていれば、不意に近くにいた騎士の一人が「ダニエル」と声をかけてきた。 「……どうした、アベル」 「いや、殿下の方だけれど……傷がかなり深そうだ」  ゆるゆると首を横に振りながらアベルと呼ばれた騎士が悲痛な面持ちでダニエルに声をかけている。そのため、ドロシーは裏口から王城に入ろうとする。早く、一刻も早く。彼を治療しなければ。その意思で動いたのだが、後ろから「ドロシー様!」とダニエルに呼び止められてしまう。
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