48.「ドロシー様。……行きましょうか」

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「あぁ、貴方は確か殿下の……」 「えぇ、専属従者のダニエルです。殿下の容体はどうなっておりますか?」  ダニエルが医者と会話をしている。その間、ドロシーは何もできなかった。ドロシーは薬師ではあるものの、医者ではない。医者の用語を聞いたところで何もできないのだから。 「ドロシー様。……行きましょうか」  それからしばらくして、ダニエルがドロシーに視線を向けてそう言ってくれる。なので、ドロシーは頷いた。しかし、医者が「待ってください」とそれを止める。 「そのお方は、どちら様でしょうか? 関係者以外は……」  医者がゆるゆると首を横に振りながら止めてくるためだろうか。ダニエルは「ルーシャン殿下の、奥様です」と凛とした声で告げる。 「それに合わせ、彼女は優秀な薬師です。なので、縫合が終わっているのならば彼女にも出来ることがあるかと」  医者の目をまっすぐに見つめ、ダニエルはそう言う。だからだろうか。医者は「……貴方が、そこまでおっしゃるのならば」と言ってくれる。 「ドロシー様。行きましょうか」  そう声をかけられ、ドロシーはこくんと首を縦に振る。そして、ダニエルに続いてルーシャンが休んでいるという私室に入っていく。 (……どうか、ご無事で)  そう思うのは、どうしてなのだろうか? やはり、未亡人になりたくないからなのだろうか? いや、それ以上にやはり――。 (謝罪、してもらわなくちゃ)  こんなにも心配をかけたこと。今までの態度。すべてについてを謝罪してもらわなくちゃ。ドロシーの気が済まないのだ。
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