52.「では、こうしましょう」

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 それから、何でもない風に続けられるその言葉。  その言葉に、ドロシーは「……え?」と声を上げてしまった。ほんの少し素っ頓狂な声になってしまったのは、仕方がないだろう。 「い、いやいや、私たち、初めの頃に離縁前提の結婚生活をするって……!」 「そんなのもう撤回。俺は、ドロシー嬢の側に居たい」  ルーシャンのその言葉に、ドロシーの胸がまた高鳴った。最近、ずっとそうだ。ルーシャンの些細な言動に心を揺さぶられ、胸が高鳴る。……別に、好きというわけじゃないのに。  しかし、 「だって、ドロシー嬢以上に面白い女性はこの世にはいないからね」  続けられた言葉にドロシーはむっとしてしまう。それは、妻としてではなく珍獣として側に居てほしいということではないか。  そんなことを考えてドロシーが不貞腐れれば、彼はけらけらと笑う。その笑みに、皮肉はこもっていない。 「俺はそう思っているけれど、ドロシー嬢はどうする?」  その後、彼は頬杖をついてそう問いかけてくる。……離縁したくないか、離縁したいか。そんなもの、ドロシーは離縁したいに決まっている。  それに、最近ドロシーには夢が出来たのだ。薬師として、後継育成に力を込めると。そのためには――離縁が必要である。 「私は……離縁、したいと思っております」  まっすぐに彼のことを見つめてそう言うものの、何処となく胸にざわめきが起こる。けれど、その感情を一度だけねじ伏せ、ドロシーは「……一つだけ、お聞かせ願っても?」問う。 「いいよ」 「――ルーシャン殿下は、私のことが好きなのですか?」
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