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「あ、そうだったわ! ごめんね! 忘れてた!」
「あ、だ、大丈夫です! 窃盗犯が逃げたから悪いんです!」
空笑いをして答えていると、陽彩に対して帰るぞと男性警察官が声を上げていた。
「わかりましたー! じゃ、またね! 英雄公社には連絡しておくわ!」
「ありがとうございます!」
その会話を最後に警察官の2人はその場を後にする。
魔法犯罪者の腕を掴んで警察署に戻って行く姿を見送ると、美桜はやったわと声を上げて喜んでいた。
「これで試験に合格だわ! 正式に英雄として活動ができるわ!」
空に向かって右腕を上げて喜んでいると、英雄公社に戻らなければと冷静になって考える。
「もう連絡がいっているかしら?」
連絡がいっていればいいなと呟きながら、美桜は英雄公社に戻ることにした。商店街や閑静な住宅街の雰囲気を楽しみながら英雄公社に戻ると、何やら慌ただしい雰囲気を肌で感じる。
「何かあったのかしら? 重大な事件でも起きたのかな?」
英雄公社に戻った美桜は、慌ただしく動いている職員たちを見て不思議そうな顔になっていた。
「とりあえず受付カウンターに行こう」
慌ただしく動く職員たちを見ながら、美桜は朝に話した受付カウンターの女性に向かっていく。
「お疲れ様です。何かあったんですか?」
「あ、黒羽さん! 黒羽さんは大丈夫だったんですね! よかったです!」
(私は大丈夫って何かあったのかな?)
自分のことを突然心配されたので、何かがやはり起きているのだと察する。
「慌ただしく動いている人が追いですけど、何かあったんですか?」
不思議だと思って受付カウンターの女性に聞くと、試験中に重傷を負った人がいるのと教えてくれた。
「私以外にも最終試験を受ける人がいることは研修の時に知っていましたが、重傷を負ったのは何人なんですか?」
「それは……」
なぜだか口籠ってしまった受付カウンターの女性を見た美桜は、言えなければ無理に言わなくて大丈夫ですと笑顔を言いながら笑顔を向ける。
「ごめんなさい。極秘だったので悩みましたが、黒羽さんになら行っていいと思います。重傷を負ったのは2名で、共に英雄としての活動は無理なほどの怪我を負ってしまいました……」
「それほどの重傷なんですか!? そんなことをする凶悪な魔法犯罪者が!?」
「はい……さきほど英雄が数名対処に当たると報告があったので、すぐに逮捕されると思いますが……」
そんなことをする魔法犯罪者が現れたのかと不安になるも、現役の英雄が対処に当たると聞いて安心をする。
「よかったです……早く捕まるといいですね……」
「そうですよね。重傷を負ってしまったのは悲しいですが、早く魔法犯罪者が捕まるのを祈るまでです」
重い雰囲気が流れてしまうも、受付カウンターにかかってきた電話によってその雰囲気はガラリと変わることとなる。
「あ、電話が。少々お待ちください」
「はい。待ってます」
受付カウンターの女性が電話に出ると、本当ですかと何度も驚いているようである。
美桜は何かあったのだろうかと考えていると、受付カウンターの女性が受話器を置きながら美桜におめでとうございますと言い始めた。
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