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「私のこと? 何かあったかしら?」
「何かって、今日から武器の携帯が許可されて本格的に英雄公社での活動が始まる日でしょ? 忘れたの?」
琴音が言うように、英雄公社での研修が終わって本格的に活動が始まる日であったのだ。美桜はハッとした顔になって思い出すと、琴音にありがとうと返答をする。
「そうだったわ! 今日も研修所に行こうと思ってた! ありがとう!」
「お姉ちゃんって少し抜けている時があるから、私がしっかりしないとね!」
「調子に乗らないの」
そう言いながら琴音の頭部を軽く叩く。
すると琴音がお弁当を作ってあるからねと言って部屋を出て行った。
「琴音の手作り弁当なんて嬉しいわね。お母さんに似て料理が好きみたいだし、豚ピーでも今度作ってもらおうかしら」
美桜は部屋の壁に沿って置いてある机の上から、銀色のネックレスを手に取った。
「お父さん、お母さん。2人の力を借りるわね」
そう言いネックレスを付けた。
このネックレスは父親が母親の誕生日に送ったプレゼントであり、ある種両親の形見となっている。
「このネックレスを付けると、守ってもらえている気がするわ。今日もよろしくね」
ネックレスを付けた美桜は部屋を後にした。
階段を下りて2階に降りると、リビングに移動をする。
「あ、今日の朝食は目玉焼きと食パンなのね」
「そうだよー。お姉ちゃんが朝はそれほど食べたくないって言ってたからね。なのに私より身長高いから羨ましいわ」
琴音が右手で自身との身長差を表していると、美桜が小さい方が可愛くていいじゃないと答えた。
「私は170センチに届かない高さだけど、身長が高いと結構不便よ。着られる服も限られるし、琴音くらいが可愛い服が多くて良いと思うわよ?」
「そうだけどさー。お姉ちゃんと比べられる時があるから嫌なの」
何度か愚痴を聞かされながら2人で朝食を進めていく。
琴音はテレビの電源を入れてニュース番組を見ているようで、最近魔法犯罪が多いなと呟いているようである。
「英雄公社だけしか対処ができないのはわかるけど、最近魔法犯罪が多いよね。世界中で問題になっているし、大多数の人は魔法なんて扱えないから怖いね」
琴音が言ったように、この世界で発見されて扱える人が限られている魔法である。世界で20%の人しか扱えない魔法は、善行や悪行に使う人に自然と別れていった。
扱う魔法1つとっても威力が違ったり、発動がしないこともあるので魔法は万能であるが万能ではないのが現在の通説となっている。
「私も魔法を扱えるけど、お姉ちゃんほどじゃないからなー。魔法は本当に才能よね」
「私は才能じゃないと思うわよ。魔法と向き合えば答えてくれるわ。私たちの親は英雄として活動をしていたのだから、きっと琴音も魔法を上手く扱えるわよ」
美桜の言葉を聞いた琴音は、そうだといいわと目玉焼きを食べながら言葉を発していた。
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