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「パンフレットでは建物とか見たけど、実際に見ると圧倒されるわ……」
事前に建物の全景を知っていたけれど、間近で見る英雄公社の存在感が凄まじかった。
「ここで働くのね……よし! 平和のために頑張っていくわ!」
頑張ろうとガッツポーズをして、美桜は英雄公社に向けて歩いて行く。
英雄公社の入り口はガラス製の両開きドアであり、美桜は恐る恐る開ける。すると、目の前に広がる広い空間には走り回っている職員と思われる人たちや受付カウンターに並んでいる人の姿が見える。
「人が多い! 書類を持って走っている人や、受付カウンターでアポイントを取っている人もいる。私はどこに行けばいいんだろう?」
どこに行けばいいのか右往左往していると、受付カウンターの中にいた1人のスーツを着ている女性が美桜の方に歩いて来ていた。
その女性は栗色の髪色をしており首筋にかかる髪の長さで後ろ髪をふわっとさせていた。また、スラっと伸びている鼻筋とハッキリとしている目元が綺麗な大人な女性と感じる。
ちなみに英雄公社には制服というものがなく、男性も女性もスーツを着て仕事をするのである。
「お困りですか? 何かお力になれますか?」
「え!? あ、ありがとうございます!」
受付カウンターの女性に頭を下げると、再度どうしましたかと話しかけられた。
「あ、えっと……英雄公社の研修が終わって、今日から出社なんです。本部に集合と言われて来たんですけど、来てからどうするのかわからなくて……」
「そうだったんですね! お名前を聞いても?」
「私は黒羽美桜です」
自身の名前を発すると、受付カウンターの女性がもしかしてと口に手を置いて驚いていた。
「もしかして、あの黒羽夫婦の娘さんですか?」
「あ、そうです……」
恐る恐る娘であることを言うと、凄い活躍をされていたのにと目元が潤んでいるのが見える。
美桜は守るために戦っていましたからと言うと、意志を継いで頑張りますと笑顔を向けた。
「期待していますね! あの方々の娘さんなら、きっと大活躍をされますよね!」
重い期待が突然のしかかるも、笑顔を崩さずに頑張りますと返す。
「あ、話がそれてしまいましたね。黒羽さんの集合場所はここで大丈夫です。英雄公社では職員という扱いですが、個人で任務を請け負ったり、町を巡回して魔法犯罪者を見つけた際に対処をするのが主な仕事となります。英雄公社で依頼をされる任務よりも、個人で発見をして捕まえることが多いと思いますよ」
「なるほどですね……」
「はい。研修を受けたのなら知っていると思いますが、魔法犯罪者に対して英雄はすぐに対処をしなければなりません。また、大規模な作戦の例としては魔法犯罪者のアジトに警察と協力をして突入をすることもあります」
研修で受けた内容を改めて教えてもらった美桜は、英雄の仕事の幅の広さや大変さを実感していた。
「さて、話が長くなりましたが、黒羽さんには最終試験として窃盗犯を捕まえてもらいます」
「窃盗犯ですか!?」
「そうです。ニュースなどにもなっていますよ? 魔法を使って相手を傷つけて、持ち物などを奪っていくんです。警察などでは対処が不可能なので、英雄公社に逮捕依頼がされました」
「そうなんですね。どこに行けばいいですか?」
どう動けばいいのかわからない美桜は、受付カウンターの女性にこれからどうすればいいのか聞くことにした。
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