第1章 夢の始まり

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「この鞘でお腹を殴れば!」  出現させた剣を大きく振りかぶって、自身に向かってくるニット帽を被っている男性窃盗犯の腹部に勢いよくぶつけた。 「ガッハァ!?」  美桜によって勢いよく腹部に鞘がぶつかると、窃盗犯は後方に吹き飛んでしまう。何度も地面を転がると、追いかけて来ていた警察官の前で力なく止まった。 「この魔法犯罪者! 逮捕します!」  可愛らしい声をしている警察官の女性が手錠をかけようとすると、ニット帽を被っている男性が地面に右手を置いてバチバチと何かを発生させた。 「捕まるわけにはいかないんでね!」  その言葉と共に右手から雷を発生させて地面を砕いた。  女性は突然の出来事に驚いてしまうも、近寄って手錠をかけようとする。だが、ニット帽の男性は態勢を整えると周囲に向かって雷を放った。 「これでどうだ! 近寄れないだろう!」 「うあ!? これだから魔法は!」  女性警察官が怒っていると、その背後から上司と思われる男性警察官が走って来る。 「大丈夫か!? 魔法には気を付けろと言っただろう!」 「すみませ~ん……」  尻もちをついている女性警察官に男性警察官が近寄って話しかけていた。その男性は黒髪の短髪で、精悍な顔つきをしている。  また、尻もちをついている女性警察官は茶色い髪色をし、肩にかかる長さをしている。可愛らしい声に似合う愛らしい顔つきをしており、大きな目元が印象的である。 「武器を持っているってことは、君は英雄か!? その魔法犯罪者を捕まえてくれ!」  突然話しかけられて戸惑いも捕まえなきゃと思った美桜は、鞘に入れたままの剣を構えて向かってくるニット帽の魔法犯罪者と相対する。 「私はまだ英雄じゃないけど、英雄になるの!」 「お前は何を言っているんだ? 小娘が邪魔をするな!」  ニット帽の魔法犯罪者は両手を前方に構えると、美桜に向かって圧縮した雷を放つ。 「消滅しろ!」  その攻撃は轟音を放ちながら一直線に向かってくるので、流石に避けれないと察した美桜は右手を前に出して光壁と叫ぶ。  すると目の前に輝く長方形の盾が現れた。 「この魔法ならどうよ!」 「小賢しい!」  ニット帽の魔法犯罪者の魔法が美桜の光壁に衝突すると、周囲に轟音を響かせながら2人の魔法が拮抗していた。 「うぐぅぅ……私は、負けない! 絶対に英雄になるんだ!」  魔力を流して光壁を強化した美桜は、そのまま前の方に歩み始める。  美桜が進むにつれてニット帽の魔法犯罪者が押されはじめ、雷の威力が減り始めていた。 「邪魔をするな!」  ニット帽の魔法犯罪者が叫ぶと、美桜は魔法を悪用しないでと声を上げる。 「魔法を悪用しないで! 魔法は人を幸せにするためにあるの! 悪用するための魔法じゃないわ!」 「うるさい! 悪用して何が悪い! 自分のために使うためだろう!」  魔法を解除したニット帽の魔法犯罪者は美桜に向かって駆け出すと、右手に雷を纏わせて殴りかかろうとする。
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