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「揺れる!揺れる!」
「滑る!落ちちゃう~!」
ロデオマシンばりの揺れに悲鳴を上げるユノとノノカ。しかし上昇のための羽ばたきが終わるとプテラノドンは風をつかまえて滑空に入り、この高さから落ちれば確実に死ぬ恐怖こそ拭えないが、激しい揺れが収まったのでユノもノノカもいくぶん落ち着いてきた。
「ボス………あの信者のひとたち、どうなるんでしょう?」
ココナがボスにきいた。
「想像よりも大きな組織のようだから、幹部が何人かいて立て直そうとするはず。すぐには解散しないだろうけど、クスリは尽きるから弱体化はするだろうね」
「あの悪霊がいなくなったのに、解散にはならない?」
「そう簡単なものじゃないよ。教祖や神がいなくたって、大半の信者はその思考依存から簡単には逃れられない。別の何かを神に見立てるかもしれない」
プテラノドンがマンションの周りを旋回して、東京に進路を向けようとすると、視力の良いノノカが何かに気付いて叫んだ。
「みんな、あのマンションの窓みて!」
「えっ?」
ノノカの言葉に、ボスとココナとユノが先ほど逃げてきたマンションのほうに目をやると、ほぼ全ての窓から、白装束の人たちがこちらを見上げて、指をさしたり、拝んだりしている。
「おいおいおい、あのマンションの住人、ほぼ信者だったって言うのか……?」
ボスが信じられないという口調で呟いた。
「もしかしてウチら、あの人たちに神的な存在って思われてない?」
ユノが言い、ノノカも頷いた。
「空飛んでるわけだし、私達の技も見たわけだし、そうかも……」
ココナは首を横に振った。
「違うと思う。だって、あの人たちが神様って信じてたあの光子っていう悪霊をやっつけちゃったんだよ?」
「えー、でもウチらのほうがかわいいよ?」
ユノが真面目にそんなことを口走るので、ノノカが笑いながら「かわいいほうが神って、ヲタの発想やん」と突っ込んだ。
「………どちらにせよ、あいつらとは因縁ができちまったね。まあ、埼玉県民は池袋までしか来ないだろうし、あまり関わらんように」
「ボス、それ偏見ですよ!地域差別!」
ココナがやんわりと非難し、「ココナ、茨城出身だもんね」と指摘して、みんなで笑った。
東京方面に飛び去るプテラノドンを、マンションの屋上から双眼鏡でじっと観察している、パーカーのフードで頭を覆う人影があるとも気付かずに。(第一話エンド)
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