ウインターハック

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ノノカを追いかけてひたすら進み、明治神宮の入り口が見えるところまで来て警戒したが、すぐに左手にくいっと曲がったので、皆は少しホッとした。 「ねえ、まだなの?」 ややお疲れ気味のユノがノノカにきくと、ノノカが道の先にある信号が一瞬不自然な点滅をするのを見て、「ここだ!」と叫んだ。 代々木体育館の入り口だった。 門は解放されており、「リスタンドACEリリースイベント会場」と書かれた立て看板が置かれていた。 「誰これ?知ってる子は?」 ボスが3人にきき、ココナが手を挙げた。 「確か、男性の地下アイドルです。ビジュアル系バンドとアイドルの中間のようなコンセプトの」 「へえ…詳しいね」 「いえ、たまたま知ってただけです」 謙遜するココナに、ユノがいたずらっぽく笑った。 「動画漁ってたよね?まだ人気がそれほどないイケメン探すの好きだから」 「違うし!」 ユノとココナがやりあってる間に、ノノカがステージのほうに歩いていってしまった。 「あ、ちょっと待ってよノノカ!」 仮説ステージにメンバー毎に色分けされた髪色の男性アイドルグループが歌い踊っており、最前列から3列ほどがガチのファンで、その後ろに何列かいるのはそこそこファン。さらに後ろで遠巻きに見ているのが野次馬といった感じで人が集まっていた。 ステージの背景にプロジェクターで曲に合わせた映像を流しており、低予算ながらそれなりに工夫している演出だ。 「ノノカ、あのなかの誰かが、リカさんの宿り主?」 ココナがきくと、ノノカは首を横に振った。 「そうじゃないと思う。ただ、ここで何かが起きることは確か」 「何かって…………例えば何?」 キャーーーーーーーーーーーッ! ステージから上がった悲鳴で、ココナの言葉の最後のほうが遮られた。 ステージでパフォーマンスする男性アイドルたちは客席が不自然にざわついているのに気付き、それが自分たちの背景に写し出された映像が原因であると気付くまで、少し時間がかかった。 「おい、なんだこれ……?」 プロジェクターで先ほどまで写し出されていた映像の代わりに、緑髪のメンバーが半裸で制服を着た若い女性とベッドで抱き合っている画像が写し出されており、当該のメンバーが明らかに動揺している。 「何これ?どっきり?笑えないんだけど」 緑髪のメンバーがどうにかMCで誤魔化そうとするが、声が上ずっているし、唇が震えている。 スタッフと思われる女性が慌ててプロジェクターの電源を落とし、別のスタッフが仮説ブースからアナウンスした。 「えー、機材トラブルの為、イベントを一時中断させていただきます。特典会に関しては、後ほどアナウンスさせていただきますので……」 緑髪のメンバーに不審と同情の眼差しがファンから注がれる。他のメンバーに手や肩を抱かれてステージを降りていく緑髪のメンバー。 一部始終を最後方から見ていたボス、ノノカ、ユノ、ココナは、目の前で起きた出来事をどう受け止めたら良いのか分からず、頭を悩ませた。 特にココナはこのグループを陰ながら応援していたので、目の前でスキャンダル画像を見せられてショックを受けていた。 「ノノカを導いた電気の妖精は、私たちにこれを見せたかった?」 ユノの質問に、ノノカは困ったような顔をした。 「わからない。ひとりの友達じゃなくて、色んな友達が『こっちこっち』って誘導してくれたの」 ボスが携帯のリカさんに話しかけようとして、既に携帯から出てすぐ横にいることに気が付いた。 「リカさん、今の見てましたか?プロジェクターに写真を仕込んだの、宿り主さんの仕業だと思います?」 「どうでしょう……。自分からこんな人目の多い場所には来ないような。ただ、あのような画像をプライベートの携帯から発見し、人物を特定するのは得意だったかも」 「つまり、宿り主さんのハッキングによって発見された先ほどの画像を受け取り、プロジェクターに仕込んだ『関係者』がこの中にいる可能性が高いと………」 「恐らく」 ボスとリカさんのやり取りをきき、ユノが自分のスマホのカメラをオンにして客のなかに他の子と違うリアクションの子を探し始めた。 ココナはスタッフと演者の仮説の楽屋であるステージ横のテントを注視し、ノノカはステージの様子を周りから遠巻きに見ている人がいないか目を凝らした。
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