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 空っぽというのは、誇張した言い方じゃない。クローゼットも、家具の中身も、なにもなかった。    僕とお揃いのマグカップも、本棚にぎっしり詰まっていた少女漫画も、少し大きめの敷布団と羽毛布団も、跡形もなく消えている。    書置き一つ、残っていなかった。    握りしめた合鍵が、手のひらにくい込む。    オルゴールの鍵は閉めてあったはずなのに、僕の大事な宝石は、忽然と消えてしまった。   「少し、距離を置かない?」  あの日、きちんと僕好みのアメリカンに入れてくれたコーヒーを差し出しながら、ロミは言った。  
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