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 たしかにちょっと、僕はロミに執着しすぎだったかもしれない。    クリスマスに指輪を贈ったときの、困惑したロミの顔を、今さら思い出す。 困らせたかったわけじゃない。 ただ、ロミの喜ぶ顔が見たかっただけなのに。     それにしたって、部屋を空にしていくとは、どういうことだろう。 「引っ越すなんて、聞いてませんけどね」    電話で問合わせた大家は言った。    ロミの職場の人たちも、心配している。 「休職届けも出てないのに、部屋の荷物が一切ないってのは、何事なんでしょうね。 衝動的に出て行ったとか、誰かに連れ去られたとか、そういうことじゃないんでしょうか」    オフィスで対応してくれたロミの直属の上司には、見覚えがあった。 忘年会の日、ロミをマンションまでタクシーで送ってきた男だ。  
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