父の首

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「……!?」  ぞわ――と背筋が総毛立った。  彦七は、手のひら全体で触れるのをやめていた。  その代わり、指の末端で、固い爪の先で……泡ひとつぶ歪めることもできぬほどの微力だけで、肉の丘陵を下からなぞり上げている。  蘇るのは、先程脇腹をいじめてきたあの指先……。  けれど、これは。  この触り方は、違う。何かが決定的に異なっている。似ているとしたら、そう、もっと別の、 「……は……」  ――思い出した。  寝台の上での出来事。  何も意図せず、ただ彼の美しさに惹かれるがまま近づいてきた妙美を、彼はどう遇したか。  着物の上から、撫でたのだ。こんな風に、胸を。  長く美しい五本の指で、ほんの少しずつ。本当に根気よく、時間をかけて、何度も、何度も。  すりすりと、かりかりと撫で続けて、そして。  そして――教えた。  目覚めさせた。  妙美の中の、女としての――  、というものを。 「……!」  がく、と両膝が抜けた。  それでも床に崩れ落ちることはない。  妙美の右腕はしっかりと彦七に掴まり続けている。  額もそうだ。離れようとしない。自らの意思で。  尻も、震えながらそのままで――。  いや、違う。そのままではない。  更に後ろに突き出している。  差し出しているのだ、彼に。喜々として。  、とばかりに。  彼は――応えた。
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