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「う……うう――……。ひ……彦七さんは……本当に、私のことが……好き……?」
「好きです」
「ひこ、彦七さんに……触れて、頂きたいの……。お胸に、また、触って頂きたいのです……!」
「触りたい。触りたいです、俺も……」
長い睫毛、瞳が至近まで迫った。
滑らかな額。ゴツリとこめかみにぶつけられる。
――熱い。
「ひこ、しち……さ、ん……っ」
呼吸が短く、極めて浅くなっていく。
がたがた震える体、胸から、少しずつ左腕を剥がしていく。
――右の乳房が露わになった。
――左の乳房も、音もなく溢れ落ちた。
手首の鍵がヂャリヂャリとぶつかり合って鳴いていた。顫動に満ちた左手を、無理やり黒御影石に張り付けた。
それを確認してから……彦七は、ゆっくりと額を離していく。
「はっ――はっ――う、う、うううぅ……!」
彼は――見た。
美しい漆黒の双眸に、ふたつ、映り込んだ。
「……!」
妙美は固く目を閉じた。
ぼろぼろと泣いた。肥大化した軟体生物、それぞれが人の頭部じみて大きい肉袋を震わせながら、激しく絶叫してしまったと思った。
……けれど実際に喉から振り絞られたのは、ふたりきりの浴室に響いたのは。
か細い懇願、ただひとつのみだった。
「嫌いにならないで……嫌いにならないで……!」
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