父の首

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 二度三度、音を立てながら施される口付け。それは唇を軽く啄まれるようで、見開いたままだった目がとろりと蕩けていく。  四度五度、六度七度。続くほどにそこがぼんやりと痺れて、妙美は新たに知った快感に夢中になった。 「んっ……んん……」  ――もっと続けてほしい。  仕舞いには肉体まで疼いて、黒御影石に置いた指先がぴくりと動いた。  同時に天啓を得た。胸を隠さなくなった今、もしかすると、彼に抱きつくことができるのではないか。……  恐る恐る、彦七の長い髪の上に両腕を回した。そして(うなじ)の辺りで手首を掴んでみた。 「……」  妙美の唇に触れたまま、ふっと彦七が微笑ったような気がした。  一体どうして彼は、こちらが顔を見られない時にばかり笑うのだろうか……。瞼を閉じたままの目尻に丸い悔し涙が浮かぶ。  その時だった。妙美の背中、両膝の裏に、グイッと強い手と腕が入り込んだ。  嘘のように体が浮き上がる。口付けが外れたのは彦七の責任ではなく、妙美が驚いて悲鳴を上げたためだった。
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