父の首

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「……あ」  触っているうちに気がついた。  反り返った魔羅。その根元、腹側に、妙美の小指ほどの長さの体毛が生え揃っている。それほど多くはなく……しかも、魔羅が屹立し、ぴったりと腹部に張り付いていたため、一見しただけではよくわからなかったのだ。  指で軽く魔羅を挟み、そっと腹から離してみた。改めて、膝で背伸びするようにして伸び上がり、露わになった部分をまじまじと観察する。 「……私と同じ、です」  何もかも違う生き物なのだ……そう思っていた。  例え、目鼻や口、手足の数は同じでも。彦七はその全てが洗練されて麗しく、妙美はその全てが粗野で無様だった。  声も違う。仕草も違う。肌や髪の艶も違う。流す汗や涙の量もまるで違う。胸だってそうだ。  熱くそそり立つ魔羅は――これだけは、美しいのかどうか、妙美にはよくわからない。けれど、「自分とは違う」という認識を更に強固にするものではあった。  それなのに――そのすぐ側に。  妙美の股間にある、とても直視できない動物的な茂み。  それと全く同じものが、彦七の下腹部にある。…… 「……?」  体毛に目を注ぎながらも、妙美は無意識に魔羅を撫で続けていた。先程挟んだ時から少し変わり、曲げた四指と手のひらで筒を作って擦るような形だ。  それで得ていた魔羅の感触が僅かに変わった。若い皮膚に弾かれる湯の名残り、水蒸気、手のひらを濡らすのはそれくらいのものだったはずなのに。…… 「……」  しがみついていた脚から離れた。もう一歩、ちゃぷちゃぷと歩み寄る。  今まで触れていなかった方の手でも、触れた。――やはり、湯とは違う。少しぬるぬるとする。  擦るのをやめ、両手で包み込むようにした。  そして妙美は、正面から見上げた。これまでずっと避けてきた箇所を。  上向く魔羅、その先端部分だ。  ここだけは。……厚い皮膚で守られず、つるりとした肉がそのまま露出してしまっているような、この部分だけは。本当に、本当に酷く痛々しく思えて、どうしても触れることができずにいたのだ。  ぬるぬるした謎の液体は、そこから生じているように見えた。
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