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「あっ……あっ」
親指を重ね合わせて蓋をした。
何が起こっているのかは不明だ。けれど、漏れ出ているもの、あるいは溢れそうなものを目撃してしまった時、大抵の人間は、それを防ぐための行動を起こすのではないだろうか。……
かといって、力一杯ぎゅうぎゅう押し込むわけにもいかなかった。痛くないとは言っていたけれど、大切な場所であることに変わりはないのだ。
それで結局、指を添える程度のことしかできていない。
漏水は止まなかった。新たな熱い雫が生まれ、じわじわ広がっていくのを指の腹で感じる。
今度は手のひらで覆うようにして塞いだ。それでも止まらない。
ああ、もしかすると、穴の問題ではないのかもしれない……。そう考え、先端に手のひらを被せたまま、もう片方の手で棒状の方を握り込んだ。こちらで堰き止めるのだ。痛くないよう、それでいてしっかりと……。
「うっ……だめ……」
だめだった。どくどくと脈打ち続けるのを強く実感するだけだ。気のせいでなければ、腫れ方さえ悪化してきている。
そもそも、魔羅の寸にしても嵩にしても、妙美の両手には余るのだ。
こんな傷だらけの醜い手なんて……とばかり思っていた。けれど、今は。今だけは、あとひとつ、いや、ふたつ、余分に手が欲しい。――
「……!」
気付いた時には乳房を押し付けていた。
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