父の首

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「……!」  背中全体に、熱い彼の胴体が密着している。  筋肉の張った白い腕。左右それぞれが妙美の乳房の上下に回され、余った両手で以て更に強く体を捕らえた。  ――せめて、波を(かぶ)ってはまた現れる肉袋ごと締め上げてくれればいいのに。これでは大きく前方に張り出してしまい、その醜さを余計強調するようになってしまう。 「うー……っ」  (うめ)くしかなかった。身を(よじ)りたい、隠したい……それでも抵抗できずにいるのは、この羞恥心や情けなさを燃やし尽くさんとばかりに抱かれ続けるからだ。  見えはしないが、彦七の顔面は妙美の濡れ髪の中に埋もれているらしかった。水と石鹸、そして新しく滲んだ汗の匂いに満ちているであろうそこを嗅ぎ、頭蓋骨の丸みにぐりぐりと額を押し付ける。  なぜそんなことをするのか。よくわからないが、しかしそれだけなら、何やらよく懐いた猫のようでもあり、例の「かわいい」という気持ちが湧いてきてもおかしくないところかもしれない。けれど、けれども、その幼い仕草とはあまりにかけ離れた熱棒が腰に宛がわれているのだ。……  胸の中央、乳房の深い谷間に残された粘液は、もうほとんど揺らぐ湯によって洗い流されてしまった。彦七の魔羅も同様だろう。実際、腰に感じるのはぬるつきではなく、ただそれそのものの形と質量、剛直感、そして熱さだった。  額で何度も擦り寄りながら、彦七が少し高い声で呟く。 「嬉しかった……嬉しかった……妙美さんが、まさかああいうことをしてくれるなんて。……」  魔羅もまた、改めて、尻の弾力を測るかのように強く押し当てられた。
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