父の首

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 妙美がそれについて、痛いのではないか……と心配する事はもうなかった。これまでの彼の言葉や表情、態度を勘案すれば、こういう答えを導き出すことができる――こんなにぼうっと茹だった頭であっても、もう。 「ひ……彦七、さん。あのぅ、魔羅は、魔羅は……触ると……こ、擦るとっ……、のですか……?」 「うん」  とあっさり、いっそあどけない(いら)えがあった。  妙美は激しく赤面し、目を白黒とさせた。無論、例えば肩を揉まれた時だとか、そういう類の「気持ちがいい」ではないことには気がついている。  ならば、ならば、ああ――なんということをしてしまったのだろう! 妙美はただ、痛くはないのなら……と思って触れただけだった。そう、そして、あの雫を見て、早く止めなければならないと必死だっただけなのだ。…… 「で、で、では……あの雫は!? 腫れ上がっていて、ご病気だから止まらなかったのではないのですか……?」 「いや、違います。……妙美さん、魔羅の根元に重たげな皮袋が下がっているのは見ましたか?」 「は、はい」 「あの袋の中には子種が入っています。興奮したり、刺激を受けたりすると、液体と共に魔羅の方へ押し出されます。それで固く腫れたようになるんです。健康であればあるほどそうなります。濡れていたのは、俺が魔羅を(ぎょ)し切れていなかったからです」 「……!? では、あの雫は……彦七さんの子種だったのですか!?」 「そのごく走りです。まだ魔羅にも袋にもたくさん残っていますから、心配しないでください」  心配するなと言われても、あまりの罪深さに目の前が暗くなるようだった。そんな貴重なものが詰まった状態とも知らず、妙美は手で握り込み、ゴシゴシと擦り、胸部で挟んで圧迫したのだ……。自分の行いを思い返すにつけ、尻からいたたまれず、腹の底からどうしようもなかった。
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