26人が本棚に入れています
本棚に追加
/179ページ
「妙美さん……。あなたは純真で、まだ何も知らないはずなのに……」
「え……?」
「どうして、どうしてそんなに。……いえ」
「ひこ、しち……さん……?」
「……柔らかい」
「!?」
「――すみません。手前勝手な感情を噛み締めていて、妙美さんを焦らしてしまったようです。ちゃんと手を動かします」
「! あ――」
不意に胸の拘束が緩んだ。体の内側に固められていた乳房が、ぶるっと大きく戻る感覚。
それだけならば、妙美が感じるのは忌々しい痛みであるはずだった。重たい肉の塊が振り子のように揺れ、皮膚と靭帯を強く引っ張る……。これが嫌だから、普段は摺り足で遅々としか歩けないほどだ。急がなければならない時は、誰も見ていなければ、手で胸を押さえてさえいる。
それなのに、覚悟していたその感覚はなかった。
彦七の手のひらは乳房から離れたわけではなかったのだ。丸く茶碗のような形になり、最もずっしりした所を掬うように支えている。
かと思えば、また動く。
支えたまま、今度は真上に持ち上げて――いや、違う。妙美の胴体の方へ、下から押し込むような力が働いている。手のひら全体、側面ではしなやかな手首まで用いながら。
同時に指も肉に食い込んできた。けれど、押し込んでくる動作ほど強い力ではなく、ごく優しい。
ぱらぱらと指を動かしつつ……目一杯押し込んだ手のひらは段々と弱まり、乳房を包んだまま静かに鳩尾の位置へ戻っていく。
ここまでのことが、ゆっくりともう一度行われた。
終われば、もう一度。とても丁寧に。
更に、もう一度。じっくりと。
もう一度。
また、一度。……
最初のコメントを投稿しよう!