父の首

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「だめ――だめ、だめだめだめだめっ、だめ! だめ! だめ……! だ、め……だめっ……だめぇ……!」  ――彼の手のひら。  手首。  指。  そして……瞳。  惜しみなく乳房に注がれる第四の熱。  彼の持つ最も研ぎ澄まされた武器(うつくしさ)が、突き刺さる自己嫌悪、暗然たる絶望感、底知れぬ悲しみ、燃え盛る羞恥を(もたら)しながら――。  妙美の中の、何かに亀裂(ひび)を入れた。 「あ、うっ……――……ぃっ……」 「……ん?」 「……も、ぃ、いい……! んぁっ、ああぁ……!」 「……」 「――もち、い……――……! ! おむねっ、あ、見て……頂けて――きもちいい……! あ、あ、あ、あ! ひこしちさんっ、ひこしちさん、ひこしちさん……!」  ――今、何を言ったのだろう。 「はっ、はぁッ……も、っと……」  何を言っているのだろう。  ……水の中に沈められたかのように。  ……夜空に放り出されたかのように。  ……自分の言葉が、よく聴こえない。 「もっと、……欲し――です……。お胸、気持ちいいの……! もっと、もっと触って……もっとたくさん、ぎゅううって、してっ」 「……」 「――!」  湯に電流が走った。  いや――違う。体の内側だ。  肉体の奥、芯の芯に見えない何かが訪れ、ビクッと腰から跳ね上がる。 「あ……あ……っ」  妙美は、口も閉じられないままそれを見下ろしていた。  真っ白な手に掌握された乳房。ゆっくりとした穏やかさは変えぬまま、ずっと揃っていた左右の動きに少しずつずれが生じ、ちぐはぐになっていく。  それだけだ。  それだけなのに、更にひっきりなしに喘ぐことになった。
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